此処は東洋の魔窟、九龍城砦。ノスタルジー溢れる人々が暮らし、街並みに過去・現在・未来が交差するディストピア。はたらく30代男女の非日常で贈る日常と密かな想いと関係性をあざやかに描き出す理想的なラヴロマンスを貴方に――。

九龍ジェネリックロマンス|ヤンジャン!|週刊ヤングジャンプの公式マンガアプリ

「このマンガがすごい!2021」(宝島社)オトコ編の3位受賞作。実写映画化、アニメ化された「恋は雨上がりのように」と同じ原作者。

3月4日まで無料で読める。

SF要素があることをまったく知らずに読めて本当によかった。これを読み終わったあとで、SmartNewsの広告に入っているのを見たらちょーネタバレ。もう一人の自分がいたことを宣伝に使うか普通。

なんか浮いてる……ノスタルジーとSF要素を掛け合わせるのは割と王道だが(「オトナ帝国の逆襲」とか)、どう出てくるのかな~、SF要素なくても引き込まれるな~と思っていたら、まさかのドッペルゲンガー(作中ではクローンあるいはジルコニアンと呼ばれる)。予想外のストーリーを展開されると気持ちいいね。膨大な数の作品が生まれているから、まったく被っていない作品なんて不可能だし、ある程度作風や流れから話の展開を予測できることが多くなったなかで、予想が外れるとだいたい良い方向に転がる。

ノスタルジー(なつかしさ=大人帝国 笑)とも相まって、めっちゃおしゃれ。あるいは演出がうまいからか。第1話から際立っていて、主人公の近接挙動から離れていって松本大洋?的な雰囲気を建物に感じつつ、引きででっかいタイトルと集合住宅の一角のベランダに主人公。遠近的であったり、一挙手一投足であったり、大げさには感じない程度に躍動感がある。演出と、少女漫画的でもあるが(若干好き嫌いが分かれるかも)基本的な人体骨格が正確に描写されている。シンプルに上手い人の作画だと思う。表情のかき分けもはっきりで躍動感を助長する。

絶対の私になる=「メイドインアビス」の「魂を騙せたらその人にとっての真実になる」みたいな。もうひとりの自分が現れたことで、「THE 自分探し」とテーマが明確になった。一本筋を通していると、風通しが良くなってストーリーが理解しやすくなるし、恋愛要素も複合させてSF要素の重みが感じられない。これもバランス感覚かな。

38話 小説「踊り場の事件簿 下」第7章 理想と現実 嘘と真 II p. 226 乱丁?こういう演出には弱い。この不可思議な感じ。「不思議の国のアリス」のような。

全体的にバランス感覚がよくて、大きな欠点が感じられない作品。イケメンの台頭が全体のテンポに悪影響を及ぼさないといいけど。あ、僻みではない(笑)