サラタメさんありなので読む前に見たほうがいい。

感想

すべては本能なので、自然と調和しながら死んでいったような時代には役立った。現代は自然と調和しながら「生きられる」ようになったので、世界や自己をもう1段階発展させる上では歪みが生じる原因になっている。まさに現代の「不」自然なのだ。

本書には豊富な具体例やデータと、それを基にしたファクトフルネスについて詳述している。ただ、時間がなければ最終11章を読むだけでもいいと思えた。よくまとまっているし、実践できることも箇条書きで書いたり、イラストで大まかに示してくれているので、わざわざ全部を読まなくても理解できる。最終章なり章タイトルを確認して、すぐに納得できないものは当該章を読むという手もある。

いずれにせよ、具体例やデータはそんなに覚えていられないので、そのあたりは流し読みでもいいと思う。少なくとも1周目は。まず全体像と自分に足りないファクトフルネスを知るべきだ。その上で最初の質問に戻り、もう一度解いてみる。少なくともチンパンジーを超えていたら成長したと考えよう。そして豊富なデータ、とくにすぐ理解できるので図表を見返してみる。あれ?と思ったものについては、その図表の説明箇所や、当てはまるファクトフルネスを再確認する。

より個人的な感想

人によってどの本能が強い・弱いは異なるし、本能を制御するための実践内容も合う合わないがあるからここからはより個人的な感想やまとめになる。

自分にとって、どの本能が強いか、どの本能が制御できていないかを考えてみると、

  • 第2「ネガティブ本能」
  • 第3「直線本能」(チョクセンバンチョーではないw)

かな。自分ごとに対しては謎にポジティブだが、世間一般や世界全体のことになるとネガティブに考えることが多いかもしれない。

第6「パターン化本能」に『認識を切り替えるには、できるだけたくさん旅をすることだ』として、ドルストリートをオススメしていた。

Dollar Street - photos as data to kill country stereotypes

軽く見てみたが、やっぱりおもしろい。視覚的によくまとまっているし、写真や動画で情報が捉えやすい。ちょうど?コロナで旅がしづらい状況なので、一時はグーグルマップのストリートビューで遊んでみるか?と考えたこともあったが、ドルストリートもよい。

旅をして見聞を広めることはパターン化本能に限らず、多くの本能を御するのに効果的だろう。ネガティブ本能も、多くは知らないことや1つの切り口(メディア)に踊らされていることが原因なので、ネットの海でジャバジャバ泳いで、ネガティブ本能に耐える体力を身につける。

直線本能はまさにデータの出番だろう。だいたい、直線ですまないことが多いだろうに、グラフを見てまず考えるのは直線だというのはおかしな話というか、おもしろい話である。算数でもまずは線形グラフだし、エクセルで近似線を引く場合はまず自動で直線が引かれる。これらの経験が積み重なった結果でもあるのだろうか。あるいは直線本能にしたがった結果、システムがそのようになっているのだろうか。まあ二次関数や指数関数よりまずは簡単な線形関数というのは何もおかしな話ではない。

あと、全体を通して今後実践していくと決めたことをまとめる。

  • 大災害がまさに起きている最中に、「世の中は良くなっている」と言うのは場違い:第4「恐怖本能」の注意点
  • 「どんな証拠を見せられたら、私の考えが変わるだろう」と常考:第4「恐怖本能」
  • ドルストリート旅:第6「パターン化本能」
  • 自分の分類の仕方は間違っているかもしれないといつも疑ってかかる:第6「パターン化本能」
  • 物事がうまくいったときは「社会基盤とテクノロジーという2種類のシステムのおかげだ」と思う:第9「犯人探し本能」
  • もし数字を丸めて見せる場合には、自分たちの不利になるように丸める:第10「焦り本能」

本書を読んで新事実や知らない本能がなかった、どれも制御できている、と思えた人にとってはまったくタメにならない本だが、少なくとも自分にとっては学びがあっておもしろかった。

本書の情報も当然、遅かれ早かれ時代遅れのデータになり、ファクトフルネスに基づいてアップデートが必要だろう。じゃあそれってどれくらいの頻度がいいのかな?と考えてみると、10年おきとか?としたくなるが、これもまた直線本能感があるな。SDGsの期限である2030年終わり、2031年には遅くとも新バージョンか、さまざまなファクトを集めた本が出てほしい。というか絶対だれか計画しているだろ。「SDGsスタートの2005年から世界がこんなけ変わったよ、SDGs前まででまとめたものもあるので、一緒に見てみよう。」的な本。

日本人の何%が本書を読んだか知らないが、少なくとも日本は、というか世界の大半はコロナで10の本能を使い倒している気がする。落合さんが、日本は失敗の本質全部をさらっているとコメントしていたが、10の本能も……おっとまたネガティブに笑

ここからメモスタイル

読書前の自問:なぜ読むのか

  • データドリブンとなる社会で、データに振り回されず偏見を持たず行動したいから
  • 半分教養として読む
  • 自分の中の思い込みを見つける、防ぐ

内容メモ

イントロダクション

チンパンジーより正答率が低いことも、嘘をつく人が数字を使うことと関連する。著者はしっかり事実を述べているが、正答率だけを見るとまたかも全員がチンパンジーより正解していない印象を与えられる。

グローバルな話をされても自分の生活には関係がないと考えている人が一定数いることは確かで、これはNewsPicksのコメントでもたまに見られる。それはGoogle流仕事術のシステムシンキングが足りないという話とも繋がっていて、世界と自分がつながっているという意識を持たずに活動している人が多いということになる。

一方で「ドラマチックすぎる世界の見方」 これを「事実に基づく世界の見方」に変えるのが本書

第1章 分断本能「世界は分断されている」という思い込み

From サタラメ

対立する二つのグループに分断しがち,中間層を考えない、この成果は単純に二つに分断できない →グラデーションを考える

第2章 ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

From サタラメ

どんどん悪くなると思う本能,メディアが特に(演出)

第3章 直線本能「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み

  • 視覚を頼りに、何かの起動を反射的に予測することができる。おそらく、ご先祖様が生き延びるのに欠かせない能力だったのだろう。
  • 自然と調和しながら死んでいった→人類史上初めて、人は自然と調和しながら生きられるようになった。:1800年まで2/6の子供が生き残る→2/2(世界平均)
  • 貧しい子供を助ける→子供の死亡率が下がり、児童労働が必要なくなり、女性が教育を受け、避妊について学び、避妊具を入手できるようになれば、状況は一変する。国や文化にかかわらず、男性も女性も子供の数を減らし、そのぶん子供に良い教育を受けさせたいと考えるようになる
  • 「コブの形」グラフ虫歯や交通事故による死者数はL2、L3で最も多くなる

第4章 恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み

  • わたしたちの本能を刺激する情報だけは、関心フィルターの穴(本書の本能10個)から入ってこられるようになっている。→わたしたちがやるべきことは、見出しの影に隠れている事実に目を向けることだ
  • 大災害がまさに起きている最中に、「世の中は良くなっている」と言うのは場違いだ。こういうときは、人類の進歩のことはいったん忘れるべきだ。そして、それぞれができる限りの協力をしよう。
  • 福島原発事故にも言及している:人々の命が奪われた原因は被爆ではなく、被爆を恐れての避難だった
  • 「どんな証拠を見せられたら、私の考えが変わるだろう」
  • ウィキペディアに載っている情報は完全でも完璧でもない:テロ情報は西洋諸国以外の国で起きた25%のみ
  • 「恐怖」と「危険」はまったく違う。恐ろしいと思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。一方、危険なことには確実にリスクがある。→リスク=危険度x頻度であり、「恐ろしさ」はリスクとは関係ない

第5章 過大視本能 「眼の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み

  • 80・20ルール:「全体の8割を占める項目はどれだろう?」
  • ただひとつの数字が、とても重要であるかのように勘違いしてしまうことに気づくこと。数字を比較したり、割り算する

第6章 パターン化本能 「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み

  • 間違った分類に気づき、より適切な分類に置き換えることだ。「先進国」と「途上国」という分類を「4つのレベル」に置き換えたように
  • 認識を切り替えるには、できるだけたくさん旅をすることだ→ドル・ストリートDollar Street - photos as data to kill country stereotypes
  • 自分の分類の仕方は間違っているかもしれないといつも疑ってかかったほうが良い

第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

文化が変わった例を集める

第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

  • 未だに問題は山積みだと言われるより、前に進んでいると聞くほうが元気が出る
  • 「子供にトンカチをもたせると、なんでも釘に見える」

第9章 犯人探し本能 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み

  • わたしたちは他人を責めたがるし、その病気を持ったガイジンがひとりでもやってきたら、出身国全体に喜んで罪をなすりつける。:梅毒の名称
  • 物事がうまく行かないときには、「犯人を探すよりシステムを見直したほうがいい」→うまくいったときは「社会基盤とテクノロジーという2種類のシステムのおかげだ」と思ったほうが良い

第10章 焦り本能 「今すぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

  • 緊急警報に慣れっこになると、本当の緊急事態に気づけなくなる。緊急でもないのに緊急だと訴えて行動を迫る活動家は、イソップ物語のオオカミ少年のようなものだ。
  • もし数字を丸めて見せる場合には、自分たちの不利になるように丸めたほうがいい

第11章 ファクトフルネスを実践しよう

ファクトフルネスの大まかなルールのイラスト