はじめに

転生ファンタジーまたはなろうの最終兵器とも言われていたらしい。

小説投稿サイト「小説家になろう」でオンライン小説として2012年9月から2015年4月まで連載。(略)34歳無職の日本人が、中世ヨーロッパ風の異世界に転生したという設定のファンタジー小説[10]。「小説家になろう」の主流である、異世界に転生した主人公が現代の知識や魔法を使って無双する設定のハイ・ファンタジーの先駆者的作品[11]で、家族を始めとした人間関係を主軸に主人公が前世のトラウマを乗り越え成長していくストーリーが展開される[12]。(略)2013年10月から2019年2月まで小説家になろう累計ランキング1位を維持していた。2019年10月時点でシリーズ累計発行部数は400万部を突破している[14]。『このライトノベルがすごい!』2017年版では単行本・ノベルズ部門第4位。

無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜 - Wikipedia

原作は未読。いつかコミック版を1巻分くらい無料試し読みしたことがある。もしかしたらアニメ化記念とかそんなときに。

小説家になろう累計ランキング1位を数年間維持し続けたのは素直に称賛できる。その意味で、以下の感想はあくまでもアニメ3話までを観た一視聴者の意見であり、本作の本質を捉えられているとは言えないかもしれない。本当に3話まで観た感じが続いたとしたら、人気を維持し続けることなど不可能としか思えないからである。まあそもそも冒頭部分で読者が離脱しなかったこともいまいち納得できないのだが。

感想

まずは褒めよう。YouTubeでOPEDのサビまとめを聴いたとき、いつも気に入ったものをメモしておいて後で全体を聴いているのだが、今期はいまのところ無職転生のOP「旅人の唄」しか引っかからなかった。

なんだか年々気になるOPEDが減っている気もするが、それでも自分の中では今期のトップ3に間違いなく入る良曲である。

作中の音楽も要所を抑えて、場面や主人公の心情に合わせた作曲となっている。当たり前だが、中途半端にしかできていない作品が多いのも事実である。作画も安定している。全体として演出にはこだわりが感じられるし、魔法もあって自然も多い環境なので、風や水の動きを繊細に描写することで画面にダイナミックさが生まれている。作品の特性や場面を活かせている点でも、非常に評価できる。このクオリティが今後も続けば、今期の作画ランキングでは最上位にランクインしてくるだろう。

たった3話だがストーリーに焦点を当てると、Wikipediaによれば前世のトラウマを乗り越えて成長していくストーリーが展開されるらしいので、今後もトラウマに悩まされることが多々あるのだろう。そう、信じたい。他転生モノでは、たしかに前世のトラウマに向き合っている作品は少ないかもしれない。最近だと「リゼロ」はがっつり取り組んでいるが、たしか「転スラ」はそんなこともなかった気がする。「転生」と銘打っているからには転生前の経験を利用しない手はない。トラウマにしておけば、出来レース的だがそれを乗り越える主人公を我々視聴者が観ることで、感動的に納得させられる。グダったが、要はトラウマを乗り越えさせる展開自体は評価できるといいたい。

さて(笑)

それでも本作が未来に語り継がれるほど良作かと問われたら、間違いなく否定する。ストレートな表現が好まれつつあるのはとくにラノベ界隈で目立つ気がするが、もはやそういう問題ではない。

心の声がクズである。「前世の男」声(CV. 杉田智和)で主人公の心境が語られるが、救いようがない。前世のトラウマはおぞましいものだが、まったく言い訳にもなっていない。とくに女性蔑視は言葉にならない。よくもまあ地上波で放送したな。他にも問題点がありすぎるのでここでは2つだけあげると、ロキシーを師と仰ぎながら、下着を盗んでそれを拝むこと、シルフィが嫌がっているにもかかわらず騙して油断したところを下着まで剥ぎ取ることである。両方に共通することはどちらも下着だが、主人公は自分のトラウマを忘れたのだろうか。むりやり下着を剥ぎ取られて裸にされた記憶はいずこへ?それとも、その反動として逆に相手の下着を取ることこそ征服の証とかいう、歪んだ支配欲求の現れなのか?もしそうならこの作品には最初から救いがないことになってしまう。転生しても歪んでしまった性根は変えられないのだから。そういう話ではないとすれば、結局単なる性サービスであり、どちらにしろ救いはないが。

トラウマの乗り越え方に異議を唱えたい気持ちはあるが、まだ3話である。見た目はロキシーに連れられて外に出られたハイおしまい、だが、先述したように「前世のトラウマを乗り越え成長していくストーリー」らしいので、ここは今後への期待を込めて静観する(「越え」のあとに読点があると別解釈ができるが)。

しかし、遅かれ早かれ視聴者は気付く。タイトルが「無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜」なのだ。視聴者が主人公に自分を投影するとすれば、転生しない限り救いがないことになる。転生モノはすべからく非現実であり再現のしようはないが、異種族との交流や歪な常識を破る行動は現実に投影でき、さまざまな示唆を与えられる。本作もそう捉えられるかもしれないが、このタイトルである。結局、手段と目的が前後していることが問題なのだ。「本気を出すため異世界に行く」のなら、現実に投影すればがんばるため新しい世界に飛び込むとかで、納得できる。「(もし)異世界(に)行った(のな)ら本気出す」、または「異世界(に)行ったので(=ら)本気出す」であれば、あくまで状況は向こうからやってくるものであり、場を整えられることでようやくがんばるということになる。この考えはある意味とても共感されやすいし、環境を与えられた主人公が成長する姿は視聴者の理想足り得る。せめてフィクションだけでも、と思う気持ちはよくわかるが、やはりそこに救いはない。

主人公に魔法の才能があることはこの際いいだろう。スポ根漫画でもあるまいし、努力描写が少なくてトントン拍子で成長しているように見えるのは許容できる。作者や本作を支持する視聴者であれば、せめてフィクションだけでも気持ちよく成長する疑似体験を得たいものである。もちろん加減はあるし、努力対象の背景がもう少し深堀りされていると、努力部分が端折られていても努力量が垣間見られて納得しやすいのだが。現実だと科学分野で功績をあげる人は豊富な知識量をもっているものだし、豊富だと漠然ながら把握できるのは、過去に義務教育範囲ででもその茫漠たる知識の一端を垣間見ているからだろう。同じように、たとえば魔法理論の背景や歴史を設定的に深堀りしたうえで主人公の魔法能力が成長すれば視聴者の共感も得られるし、その設定を一応視聴者は網羅したことになるので、成長の疑似体験もより深みを増す。一応言っておくが、属性がいくつで、詠唱は色々と設定するのに必要で、程度の話ではない。なんなら主人公は詠唱を破棄する(笑)。

世間の評判

紹介記事、レビューを見ても、主人公の下卑た性格について言及しているのはなかなか見当たらない。もちろん探せばある。ただ、本作を肯定している声が多いのは事実だろう。たとえば全てのアニメファンにオススメしたい 冬アニメ『無職転生』のココが凄い!

だいたいどこも評価は星4/5前後?無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ - アニメ情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarksアニメ

Googleでは「無職転生 アニメ レビュー」で検索したらキーワードとして「気持ち悪い」も一応出る。

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もちろん星1評価もある。Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: 無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 1 (MFブックス)

低評価を付けられている理由を考察している記事があった。【無職転生】主人公がクズで気持ち悪い?嫌いという声も多数!

まとめ

色々と御託を並べたが、原作を知らないこともあって、今後どうストーリーが展開されていくのかは期待している。なんてったって3話しか観ていないからね。それで切り捨てるには作画や音楽が好きなだけにもったいないし、なろう覇者の作品がこの程度で終わるわけがないと信じて、今後も継続視聴していく予定である。